『開山忌法要』
本日四月十四日(木曜日)十二時半より 五百五十四回忌の開山忌法要を巌修いたしました。
境内にて 古塔婆・白木位牌お焚き上げ、聖観世音菩薩像、地蔵菩薩、白龍大権現、光厳法皇、関氏三代供養塔、歴代諸上人供養、本堂にて僧侶十名による開山忌法要が勤められました。
法要後、住職による法話をお話しいただき、黒白二鼠(こくびゃくにそ)の掛け軸の絵解きをしていただきました。
この黒白二鼠のお話は、昔、罪人が罰として気の荒い象に踏み殺させるという牢から逃げてきた法律があったそうで、気の荒い象から逃げ、古井戸の中に細い草の根が垂れ下がっており、その古井戸に体を滑り込ませ、象から逃れました。
古井戸の底には、大蛇が大きな口を開けて 男が落ちてくるのを待ち受けています。
それとは別に四匹の毒蛇が男を狙っています。
また、上の方からかすかな音がし目をやってみたら、二匹の白と黒ネズミがカリカリと草の根元をかじっているそうです。
このままじっとしていても、いつかは井戸の底に真っ逆さま。
外には気の荒い象、井戸の底には大蛇、毒蛇も狙っています。
男は どうすることも出来ず、あきらめて空を眺めていました。
その時、井戸のそばに生えていた大きな木の枝から何かがぽとりと落ちてきました。
木の枝にミツバチが巣を作り、偶然 男の口の中に入った それは蜂蜜だったのです。
男は、今すぐに自分の命が失われようとしていることを忘れ、じっと口を開けて落ちてくる甘い蜜を待ち受けているのでした。
この話を通して、仏は教えてくれています。
牢とはこの世であり、罪人とは迷える人間。
気の荒い象は、常に変化しているすべてであり、見つけた古井戸は、人間の住む家です。
細い草の根は人間の寿命。
井戸の底に待ち受けている大蛇は、地獄そのもの。
四匹の蛇は、肉体の病苦。
白・黒のネズミは、昼と夜。
私のいのちが徐々に終わりに近づいていることを示しています。
甘い蜜は、人間の煩悩であります。
人間は上から落ちてくる甘い蜂蜜を口に入れ、その甘さにうつつを抜かし、明日になれば、今日の自身の姿が存在しないということを少しも考えようとせず、最も大切なことを忘れてしまっています。
すぐに なにをしなければならないかを考え、多くの苦しみからどうすれば抜け出せるのかを専心しなければならないのです。
という法話をしていただきました。
(この話は『仏説譬喩経』(大正蔵4、801頁中~下)、『衆経撰雑譬喩』8話(大正蔵4、533頁上~中)に説かれています。)